言葉では表現しにくい検索のニーズに答える。ZOZOTOWN「類似アイテム検索」の開発秘話

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左:デザイナー小野
中央:画像検索エンジニア日下部
右:プロダクトマネージャー浦

今年8月、ZOZOグループが運営するファッション通販サイト「ZOZOTOWN」に、類似アイテム検索機能を導入しました。

類似アイテム検索機能は、ZOZOTOWNの各商品画面上にある「画像検索アイコン」をタップするだけで、閲覧中の商品の形・質感・色・柄などをもとにAIが似ている商品を検出し、一覧で表示する機能です。

本機能の開発を担当したデザイナー小野、画像検索エンジニア日下部、プロダクトマネージャー浦の3名に直撃し、インタビューをしてきました。

言葉では表現しにくい検索のニーズに答える

ー まずは、類似アイテム検索の誕生から伺います。開発のきっかけを教えていただけますか?

小野:もともと、2018年の夏頃からZOZOTOWNアプリチームの中でZOZOTOWNリニューアルの構想があり、そのメイン機能の1つとして導入を検討していたのがカメラサーチ(スマホに保存されている画像や写真から検索できる機能)です。

日下部:特に若い方の中では、SNSをはじめとした画像からの検索が一般的になっているので、導入したいと考えてました。Instagramなどでキャプチャを撮って探す人は多いですよね。

ー カメラサーチとして動き出したプロジェクトが、類似アイテム検索になっていったんですね。

小野:色々な人にヒアリングをしていると「見ている商品と似ている商品が欲しい」という要望が多かったんです。好みのデザインだけど、より価格帯が自分に合っていたり、別ブランドで更に気に入る商品があるかもしれない。そういう需要に応え、ユーザーにとってベストな商品にたどり着ける機能として成立しそうだなと思いました。また、類似アイテム検索の場合は、ユーザーが直感的に似ていると感じるかどうかがポイントで。

ー 直感的?

小野:カメラサーチのような画像からの検索だと、画像で使用している商品と一致していなければユーザーにとって物足りない体験になってしまう可能性がありました。ユーザーがジャッジする基準も高いですから。類似検索の場合、完全に一致していなくてもその商品が持つ「特徴」を捉えていればユーザーは直感的に「似ている」と感じることができます。更に、それを起点に新たな商品との出会いを創出でき、ユーザーも楽しみながらサービスを利用してくれるのではないかと思いました。

日下部:この技術が必要になり話をもらったのが、私が所属するZOZO研究所 福岡(以下、福岡拠点)です。青山拠点とも適宜連携しながら開発を進めていきました。

ー なるほど。類似アイテム検索にすると決まってからは、スムーズに進んだのでしょうか?

小野:同時期に社内には多数の大きなプロジェクトがあり、画像検索の研究や検証は進行できていましたが、実用化に向けて進める部分がどうしても弱くなっていました。

浦:僕がジョインしたのは、プロジェクトの開始当初からではなく、研究/検証段階から実用化に向けてリードするタイミングでした。まずはプロジェクトのロードマップを引き直し、ユーザーへの提供価値の言語化を行い、MVP(最小限で価値提供のできる動くもの)の開発を進行、各種KPIの設計からはじめました。

小野:PMが入ると一気にドライブしましたね。エンジニアでもデザイナーでもない第三者の視点で引っ張ってくれる人の存在って大きいです(笑)

日下部:目的がはっきりしましたし、ユーザーインタビューをやれたのも良かったですね。

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滞在時間4倍、CVR20%向上の効果

ー ユーザーインタビューではどういうことをしたんですか?

浦:様々な意見が出ていたので、1番ユーザーから求められるものは何かを探るために、モックページを触ってもらいながら社内向けのインタビューを行いました。うちの社員は服好きな人が多いので、良いヒアリングができると思ったんです。

やってみると、例えばZOZOTOWN上だと水色のカテゴリーに入っているものが、実はグレーだった、というような「色」の満足度が高かったのが印象的でした。

日下部:導入施策についても、一部ユーザーに対するA/Bテストや段階的リリースなど、小出ししていけたので進めやすかったです。

小野:ZOZOグループではプロジェクトが大きい分、一度にフルでリリースしていることがほとんどでしたから。

浦:AIを用いたプロダクトは、ロジックを人の言葉で説明することが難しいです。もちろん評価する仕組みはあるのですが、作っている人たちも「本当にこのままで大丈夫なのか」といった不安な気持ちを抱えていました。一部のユーザーに向けてサイレントリリースしてその結果をデータで見ることで、安心感を持ってプロジェクトをドライブしやすいといった利点もありますね。

ー 実際に導入してみて、効果は見られましたか?

浦:ごく一部のユーザーに対して類似アイテム検索機能をサイレントリリースをし、データを分析したところ、当初想定されていた懸念点もなく、滞在時間が約4倍長い、という良いデータも出ました。

他のある機能と比べ、CVRは120%程度と高い値が出ています。普段あまり服に興味がない人が、類似アイテム検索を使うことで服に興味が湧く。その一方で、ファッション好きは気に入る商品を探すという事自体が好きなので、検索結果から更に類似品を探す。どちらにとってもメリットがあるというのは良い結果でした。

小野:検索結果は似ている順に表示して、現在は表示件数を100件にしています。あまり出しすぎても似なくなってきてしまいますし、これくらいがちょうど良いと考えていて。実際、多い人だと月に100回以上使ってくれているユーザーもいます。

ー そんなに使ってくれているんですね!

小野:新しい買い方を提供できているという実感があるのは、嬉しいことですね。

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作りたかったのは、ZOZOTOWNがより良くなるための一手

ー 導入後、何か改善していることなどはあるのでしょうか?

日下部:福岡とML-SREチームが連携して、コスト削減やユーザーからは見えない場所の改善を行っています。例えば、リリース当初は秒間でのリクエスト数は、オートスケールするとはいえやや限られた状態でしたが、年内にはおそらく10倍、あるいはそれ以上のリクエスト処理性能かつ、インフラコストの大幅削減ができそうです。これは、インフラの力がビジネスやプロジェクトに多大なる影響を与える好例だと思います。既に速度改善の効果がKPIの改善にも見られはじめ、リリース当初と比べCTRが30%前後改善していたりと良い傾向が出ています。

小野:これができれば、この機能を商品詳細ページの表に持ってくることも可能かもしれません。今は商品詳細ページ上に「画像検索アイコン」を置いて、使いたい人だけが使う機能となっていますが、「似ているアイテム」として、ユーザー全員の目に触れるコンテンツとして置くこともできそうですね。

ー なるほど。よりたくさんのユーザーに触れてもらえるのは良いことですね。

浦:今後は単一アイテムだけでなく、複数のアイテムの検索も導入していきたいです。ZOZOTOWNに表示される画像の中には、商品単体の物撮り画像だけではなく、モデルの全身が写っている画像があります。今はメインの商品にしか対応していないので広げていきたいですね。

ー 確かに「ニットを見ていたけど履いているパンツが可愛いな」なんてことありますよね。

浦:ZOZOTOWNは服に特化したデータがあるので、服に向けたアルゴリズムになっています。これを使って写真の中でメインじゃない商品も探すことができる。これは提供していきたいですよね。

日下部:アクセサリも現在は対応できていないので、入れていきたいですね。これまでと違う手法で機械学習させなければならず、まだ準備中の段階です。画像検索には、主に検出と検索、2つの機能が協調して動作していますが、どちらの精度も上げて提供したいですね。

ー まだまだ色々な成長がありそうですね。最後に、この開発に携わってみていかがでしたか?

浦:機能の1つとしてではなく、ZOZOTOWNがより良くなるための一手として作ったものです。ユーザーに使ってもらえている実感があるのは嬉しいですね。

日下部:福岡、青山(東京)、幕張(千葉)の3拠点が連携して1つのプロジェクトを進めるのは、決して楽なことではありません。それでも、ZOZOTOWNのように昔から多くのお客様にご利用いただいているサービスのお買い物体験を、より良いものに変えられる喜びは大きいですね。今後も、距離や部署など色々な隔たりを気にせずに「こんなことできない?」という相談を気軽にしてもらえると良いなと思ってます。

小野:ユーザーの声を聞きながら、様々な要望に答えていきたいです。今はシンプルに作り上げている状態。もう1度ロードマップを引き直して改善しても、良いものが見えてくるかもしれません。

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